既卒で総合型選抜を受ける時の分かれ目は、卒業年の条件、共通テストの年度、卒業した高校とのやりとりの3つです。この記事は、文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」と、2027年度入試(2027年4月入学)の10大学の募集要項にもとづいています。この3つと、浪人していた期間の書類への書き方を整理します。
浪人生(既卒生)でも総合型選抜は受けられるか
文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」の「第9 出願資格」は、大学に出願できるのは、大学の入学資格を持つ人と、入学までに持つ見込みの人1だと定めています。高校を卒業した人は、この条件を満たしています。浪人生(既卒生)だからという理由で総合型選抜を受けられない、という全国共通の決まりはありません。
実施要項の「第13 その他注意事項」の「5 入学者選抜の公平性・公正性の確保」は、不適切な選抜の一つを挙げています。合理的理由がある場合を除き、性別、年齢、現役・既卒の別などの属性を理由に1、一律に取扱いの差異を設けることです。
一方で、実際の募集要項には、卒業年の範囲を決める方式や、現役生だけの方式が多くあります。出願できるかは、大学が方式ごとに決める出願資格で決まります。実施要項は、大学が募集要項を2026年12月15日までに発表するよう求めています。
制度の全体は総合型選抜とは、総合型選抜と学校推薦型選抜の違いは総合型選抜と学校推薦型選抜の違いの記事で説明しています。
要項の「出願資格」の読み方
| 要項の書き方(例) | 意味 | 2027年度入試の例 |
|---|---|---|
| 高等学校を卒業した者及び卒業見込みの者 | 卒業した年に関係なく出願できる | 南山大学の総合型入試(卒業年の制限なし) |
| ◯年4月以降に卒業した者及び卒業見込みの者 | その年月以降に卒業した人と、卒業見込みの人 | 東京大学の学校推薦型選抜(2025年4月以降の卒業) |
| 卒業後◯年以内の者 | 卒業してからの年数で区切る | 神奈川大学の総合型選抜(卒業後1年以内) |
| ◯年3月卒業見込みの者 | 現役生だけ。既卒の人は出願できない | 慶應義塾大学 文学部 自主応募制推薦(2027年3月卒業見込み) |
大学別:既卒の人の出願条件と共通テスト(2027年度入試)
このサイトの大学別の記事で、公式の募集要項から確かめた既卒の扱いを表にしました。同じ大学でも、方式や学部で条件が変わります。
| 大学・方式 | 卒業した人の出願 | 共通テスト |
|---|---|---|
| 東京大学 学校推薦型選抜 | 2025年4月以降の卒業者まで。2026年3月卒業は出願でき、2025年3月以前の卒業はできない | 令和9年度の共通テストが必要。過年度の成績は使わない |
| 京都大学 特色入試 | 多くの学部は2025年4月〜2027年3月の卒業(見込み)。医学部医学科・薬学部・工学部は原則2027年3月卒業見込み | 全学部で令和9年度の共通テストが必要 |
| 東北大学 AO入試 III期 | 文・法・経済・理・薬・工・農は卒業した人も出願できる。医学部・歯学部は2026年3月以降の卒業(II期は現役生だけ) | 令和9年度の共通テストが出願要件 |
| 名古屋大学 総合型選抜(理学部) | 2026年3月までの1年間(2025年度中)に卒業した人も出願できる | 数理・物理・地球惑星科学科は指定科目の受験が要件。化学科・生命理学科は課さない |
| 九州大学 総合型選抜Ⅰ(共創学部・教育学部) | 2021年4月以降に卒業した人も出願できる | 課さない |
| 九州大学 総合型選抜Ⅱ | 学部により、2021年4月以降の卒業者まで(文学部・理学部など)か、2025年4月以降の卒業者まで(法学部・経済学部・歯学部・農学部など) | 指定の教科・科目の受験が出願資格 |
| 筑波大学 AC入試 | 卒業した人も出願できる。高校卒業後に何年か社会で活躍した人なども広く対象 | 課さない |
国公立大学は、卒業年の範囲を決めている方式が多く見られます。東京大学の学校推薦型選抜と京都大学の特色入試(多くの学部)は、前年度に卒業した人までです。筑波大学のAC入試のように、卒業年の範囲を書いていない方式もあります。
| 大学・方式 | 卒業した人の出願 | 共通テスト |
|---|---|---|
| 早稲田大学 地域探究・貢献入試 | 出願資格に卒業年度の制限は書かれていない | 2次選考の合格者が受験し、3教科300点で240点以上が合格 |
| 早稲田大学 社会科学部 全国自己推薦入試 | 2026年3月に卒業した人まで | 使わない |
| 慶應義塾大学 法学部FIT入試、総合政策学部・環境情報学部 AO入試 | 出願できる(SFCのAO入試は年齢の上限なし) | 使わない |
| 慶應義塾大学 文学部 自主応募制推薦、理工学部 分野志向型入試 | 2027年3月卒業見込みの人が対象で、卒業した人は対象外 | 使わない |
| 立教大学 自由選抜入試 | 文学部(史学科を除く)・経済学部・社会学部・環境学部は卒業した人も可。史学科・異文化コミュニケーション学部方式B・スポーツウエルネス学部は2025年4月以降の卒業。理学部・法学部・観光学部などは現役生だけ | 求めない |
| 同志社大学 自己推薦入学試験(法・経済・スポーツ健康科学部) | 法学部は2025年4月1日以降の卒業。経済学部・スポーツ健康科学部は2026年に卒業した人まで | 選考には使わない |
私立大学は、同じ大学の中でも学部ごとの違いが大きくなります。立教大学の自由選抜入試は、既卒の人も出願できる学部、2025年4月以降の卒業に限る学科・学部16、現役生だけの学部の3通りに分かれます。
卒業してからの年数で区切る方式もあり、神奈川大学の総合型選抜は卒業後1年以内、法政大学の文学部 哲学科・日本文学科・英文学科は卒業後5年以内です。
詳しい条件は、東京大学の学校推薦型選抜、京都大学の特色入試、東北大学のAO入試、名古屋大学の学校推薦型選抜・総合型選抜、九州大学の総合型選抜、筑波大学のAC入試、早稲田大学のAO入試、慶應義塾大学の総合型選抜、立教大学の自由選抜入試、同志社大学の総合型選抜の記事にまとめています。
共通テストの扱い:前の年の成績は使えるか
大学入試センターは、令和6〜8年度入試(2024年〜2026年1月実施)2の共通テストの個人別の成績も大学に提供します。ただし、過年度の成績を使うかどうかは、大学が方式ごとに決めます。
| 扱い | 大学・方式の例 | 既卒の人にとっての意味 |
|---|---|---|
| 令和9年度の共通テストを受ける必要がある | 東京大学 学校推薦型選抜、京都大学 特色入試、東北大学 AO入試 III期 | 前の年に受けた人も、もう一度受ける |
| 過年度の成績は使わないと要項に明記 | 東京大学、岡山大学(総合型選抜・学校推薦型選抜Ⅱ)、弘前大学(総合型選抜Ⅱ) | 前の年の点数は合否に使われない |
| 過年度の成績を出願資格の確認に使う | 同志社大学 生命医科学部 医情報学科の自己推薦(2026年3月以前の卒業者) | 令和8年度(2026年1月実施)の外国語・数学・理科で計390点以上なら、評定の代わりになる |
| 共通テストを使わない | 慶應義塾大学、筑波大学のAC入試、立教大学の自由選抜入試、九州大学の総合型選抜Ⅰなど | 書類と大学の試験で決まる |
東京大学の学校推薦型選抜は、令和9年度の共通テストで指定の教科・科目をすべて受けることが要件で、過年度の成績は利用しないと要項に書いています3。
例外は、同志社大学の生命医科学部 医情報学科の自己推薦です。2026年3月以前に卒業した人は、評定の代わりに令和8年度(2026年1月実施)の外国語・数学・理科の成績(計390点以上)17で出願資格を満たせます。
2027年度入試の共通テストは2027年1月16日・17日です。出願は2026年9月15日から10月2日までで、この日で締め切られています。
出願書類:卒業後の期間をどう書くか
既卒の人が迷いやすいのが、高校を卒業してから出願するまでの期間を、どの書類にどう書くかです。書類ごとに、対象になる期間が違います。
| 書類 | 書かれる内容 | 既卒の人の扱い |
|---|---|---|
| 調査書 | 卒業した高校が作る。卒業時までの成績と記録が書かれる | 従前の様式でもよい(実施要項 第5の3) |
| 活動報告書 | 実施要項は「高等学校までの学習や活動の履歴」を書く書類としている | 高校時代の活動が中心。卒業後も書けるかは要項の対象期間で確かめる |
| 志望理由書・学修計画書 | 入学希望理由、入学後に学びたいこと、大学卒業後を見据えた目標 | 卒業後の1年で志望が深まったことを、理由につなげて書ける |
| 既卒者向けの様式(東京大学など) | 卒業後の活動を書く | 指定がある大学では、卒業後の活動はこの様式に書く |
既卒者向けの様式がある大学:東京大学
東京大学の学校推薦型選抜の要項は、書類で求める学習成果などを、原則として在学中のものとしています。そのうえで、出願時にすでに卒業している人は、卒業後の活動を指定の様式3「既卒者の卒業後の活動報告」で提出できます。
慶應義塾大学の総合政策学部・環境情報学部のAO入試は、中学校卒業後から出願までに得た成果を評価する入試で、卒業後の取り組みも対象の期間に入ります。詳しくは東京大学の学校推薦型選抜と慶應義塾大学の総合型選抜の記事で説明しています。
指定の様式がない場合の書き方
活動報告書は、実施要項では高等学校までの学習や活動の履歴を書く書類です。卒業後の活動を書く欄がない時は、高校時代の活動を中心に書き、卒業後の1年は志望理由書や面接で説明します。書き方の基本は活動報告書の書き方と志望理由書の書き方の記事にまとめています。
志望理由書では、浪人した事実を長く説明する必要はありません。たとえば「(例)統計を学び直し、地域の人口データを自分で調べたことで、地域政策を学びたい理由がはっきりした」のように、事実と志望の理由をつなげます。
評定と調査書は、卒業時までで確定している
評定(全体の学習成績の状況)は、卒業した時点までの成績で確定しています。専修大学のネットワーク情報学部の公募制推薦のように、既卒の人は修了時までの成績で見ると要項に書く大学もあります。計算の仕方は評定平均の計算方法の記事で説明しています。
調査書は、卒業した高校に発行を頼みます。実施要項は、過年度卒業者は従前の様式の調査書でもよいとしています。指導に関する記録の保存期間は卒業後5年で、それを過ぎた分は原則として記載を要しません。頼み方は調査書とはの記事にまとめています。
学校推薦型選抜を受ける時:卒業した高校に頼むこと
学校推薦型選抜は、出身高等学校長の推薦にもとづく入試です。既卒の人は、卒業した高校の校長の推薦を受けることになります。2027年度入試では、学校推薦型選抜の出願は2026年11月1日以降、合格発表は12月1日以降です(実施要項 第4の5)。
学校長の推薦が要る入試にも、既卒の人が出願できる方式があります。東京大学の学校推薦型選抜は2025年4月以降に卒業した人まで出願でき、書類の提出(アップロード)も高校が行います。九州大学の工学部・芸術工学部の学校推薦型選抜は2025年4月以降に卒業した人、近畿大学の推薦入試(一般公募)は2026年3月以降に卒業した人も出願できます。
一方で、名古屋大学の学校推薦型選抜や上智大学の推薦入学試験(公募制)は、2027年3月卒業見込みの人だけが対象です。公募推薦の仕組みは公募推薦とはの記事で説明しています。
併願と1年の日程(2027年度入試)
既卒の人は、高校の進路指導の案内が届かないので、要項の入手から出願までを自分で管理します。
総合型選抜だけにしぼらず、一般選抜の学習を続けながら受ける組み方が基本です。専願の方式に合格すると、その大学に入学することになります。専願・併願の言葉の意味は総合型選抜の併願の記事で説明しています。
現役生と比べて不利になるか
現役・既卒別の合格率を示す公的な統計は、この記事で確かめた資料には無いため、「不利か有利か」を数字で答えることはしません。代わりに、実施要項と大学が公表している文言で整理します。
最初の節で見たとおり、実施要項は現役・既卒の別で一律に扱いを変えることを不適切な選抜としています。武蔵野大学の入試Q&Aは、総合型選抜Ⅰ期に既卒生も出願でき、審査で有利・不利はないと説明しています。南山大学の総合型入試は卒業年の制限がなく、よくある質問で年齢の上限もないと説明しています。
実際に違いが出るのは、合否の判定より手前の部分です。卒業年の条件で出願できない方式があること、推薦や調査書を卒業した高校に頼むこと、書類に書ける期間が要項で決まっていることです。
よくある質問
- Q. 2浪・3浪でも総合型選抜に出願できますか?
- A. 方式によります。九州大学の総合型選抜Ⅰは2021年4月以降に卒業した人、法政大学の文学部 哲学科・日本文学科・英文学科は卒業後5年以内の人も出願できます。南山大学の総合型入試は卒業年の制限がありません。一方、東京大学の学校推薦型選抜は2025年4月以降の卒業、神奈川大学の総合型選抜は卒業後1年以内です。
- Q. 浪人生でも学校推薦型選抜(公募推薦)は受けられますか?
- A. 既卒の人が出願できる方式もあります。東京大学の学校推薦型選抜は2025年4月以降に卒業した人、近畿大学の推薦入試(一般公募)は2026年3月以降に卒業した人も出願できます。推薦は卒業した高校の校長から受けます。名古屋大学の学校推薦型選抜のように、2027年3月卒業見込みの人だけの方式もあります。
- Q. 前の年に受けた共通テストの成績は使えますか?
- A. 大学によります。大学入試センターは過年度の成績も大学に提供していますが、使うかは大学が決めます。東京大学の学校推薦型選抜、岡山大学の総合型選抜は過年度の成績を使いません。同志社大学の医情報学科の自己推薦は、2026年3月以前に卒業した人が令和8年度(2026年1月実施)の成績で出願資格を満たせる例外です。
- Q. 浪人中にしたことは、どの書類に書けばいいですか?
- A. まず要項で書類の対象期間を確かめます。東京大学の学校推薦型選抜は、既卒者が「既卒者の卒業後の活動報告」を提出できます。指定の様式がない大学では、活動報告書は高校時代の活動を中心にし、卒業後の学びは志望理由書や面接で、志望が深まった理由として説明します。
- Q. 浪人している間に評定は変わりますか?
- A. 変わりません。評定(全体の学習成績の状況)は、卒業した時点までの成績で確定しています。評定の基準がある方式は、卒業時の評定で出願できるかを確かめます。
- Q. 卒業した高校の調査書が取れない時は、どうすればいいですか?
- A. 実施要項は、廃校などで調査書が得られない場合、卒業証明書や成績通信簿を出させるなどの代わりの措置をとり、そのことを募集要項に書くよう大学に求めています。まず卒業した高校に問い合わせ、取れない時は志望大学の要項の該当箇所を確かめて、入試担当に相談します。
まとめ
浪人生(既卒生)を総合型選抜から外す全国共通の決まりはありませんが、卒業年の範囲を決める方式や現役生だけの方式は多く、出願資格は大学が方式ごとに決めます。東京大学の学校推薦型選抜は「2025年4月以降の卒業」、神奈川大学は「卒業後1年以内」、慶應義塾大学 文学部の自主応募制推薦は「2027年3月卒業見込み」です。
卒業後の活動は、要項で書類の対象期間を確かめてから書く場所を決めます。
東京修学館では、既卒の方の志望校選びと、出願できる方式の洗い出し、卒業後の期間を含めた書類づくりのご相談を、無料相談でお受けしています。総合型選抜の全体は「総合型選抜とは」の記事もあわせてご覧ください。
参考資料
この記事は次の公式資料をもとに書いています。数字や日程は必ず最新の要項で確かめてください。
- 令和9年度大学入学者選抜実施要項
- 令和9年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施要項
- 令和9(2027)年度 東京大学学校推薦型選抜 学生募集要項
- 令和9年度京都大学特色入試学生募集要項
- 令和9年度(2027年度)東北大学 入学者選抜要項
- 令和9(2027)年度 名古屋大学 総合型選抜学生募集要項
- 令和9年度 名古屋大学 学校推薦型選抜学生募集要項
- 令和9(2027)年度 九州大学 総合型選抜Ⅰ 学生募集要項
- 令和9(2027)年度 九州大学 総合型選抜Ⅱ(次世代研究者発掘入試Ⅱを含む)学生募集要項
- 令和9年度 アドミッションセンター入試 学生募集要項
- 2027年度 地域探究・貢献入試 入学試験要項
- 社会科学部 2027年度 全国自己推薦入学試験 入学試験要項
- 2027年度 法学部FIT入試 募集要項
- 総合政策学部・環境情報学部 2026夏秋AO入試 募集要項
- 2027年度 自主応募制による推薦入学者選考募集要項
- 2027年度 自由選抜入試要項・国際コース選抜入試要項(法学部・異文化コミュニケーション学部/GLAP)
- 2027年度 入学試験要項(AO入試・自己推薦入学試験・推薦選抜入学試験)全ページ
- 各学部の2027年度入学試験要項(2027 自己推薦入試・公募推薦入試一覧)
- 2027年度 入学試験要項 総合型選抜(総合評価型/適性検査型)
- 2027年度 総合型選抜学生募集要項
- 令和9(2027)年度 学生募集要項〔総合型選抜〕
- 入学試験要項 2027 総合型入試
リンク先の確認日:2026-10-16
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