最終更新: 2026-10-09 / 監修: 家近亮子(東京修学館 学長) / 出典: 文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」(令和8年5月27日付け通知)、各大学の2027年度入試の募集要項、成蹊大学の志望理由書の様式(法学部)、慶應義塾大学 法学部FIT入試のFAQ、関西大学 AO入試ガイドブック(2026年度の結果と講評)
法学部の志望理由書では、法律学・政治学を学ぼうとする理由、入学後に学びたいこと、その学びが将来にもつ意味が問われます。書く時の要点は、身近な出来事を「誰の権利や利益をどう調整するか」という問いに言い直し、学びたい分野と、関わりたい問題につなげることです。この記事では、要項の設問の原文から大学が見ている点を整理し、組み立て方と例文4本を載せました。志望理由書全体の構成は志望理由書の書き方、入試の方式は法学部の総合型選抜で説明しています。
法学部の志望理由書で問われること(要項の設問と字数)
志望理由書に書く中身の柱は、文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」に示されています。総合型選抜では、本人が記載する資料を評価に活用しなければならないとされ、その一つが大学入学希望理由書です(第3の1(2)①)。書かせる中身は、入学希望理由、入学後に学びたい内容・計画、大学卒業後を見据えた目標等とされています(第6の5(2))。
| 大学・方式 | 設問 | 分量 |
|---|---|---|
| 慶應義塾大学 法学部 FIT入試 | 何故、慶應義塾大学の法学部(法律学科/政治学科)で法律学/政治学を学ぼうと考えたのか、また法学部で学ぶ法律学/政治学が、自分の将来において、どのような意味をもち得るのか | 800字以内(本人の自筆・横書き) |
| 成蹊大学 法学部 自己推薦型 | 1. 法律学や政治学を学ぼうとする理由 2. 1と関連づけて、関心を持っている社会問題や社会現象と、法律学や政治学を学ぶことがその理解と対処にどう役立つか | 設問2は横書き600字以内 |
| 大阪大学 法学部 総合型選抜 | 大阪大学への入学を目指す理由と、学部で取り組みたい学修 | 800字程度 |
| 関西大学 法学部 AO入試 Ⅲ型 | 法曹を志望する理由(入学志望理由書)。入学後の4年間の学習と、将来法曹としてどう活動するか(将来計画書) | 将来計画書は2,000字程度(2,500字上限) |
慶應義塾大学のFIT入試は、出願資格にも「志望理由、および入学後の目標と構想が明確」であることを挙げています。慶應義塾大学と関西大学Ⅲ型は将来まで問い、大阪大学と成蹊大学は学ぶ理由と学びの中身を問います。どの設問でも、法学部で学ぶ中身を自分の関心と一本の筋でつなぐことが求められます。
字数は大学で500字程度から2,000字程度まで
字数も大学で違います。学習院大学の政治学科(学校推薦型選抜)は500字〜600字、成蹊大学の設問2は600字以内、慶應義塾大学のFIT入試は800字以内、大阪大学は800字程度です。同志社大学の自己推薦は1,600字程度、立教大学の自由選抜入試は2,000字程度です。関西大学Ⅲ型の将来計画書のように、2,500字を上限にする書類もあります。
600字以下なら経験を2〜3文に絞り、1,600字以上なら問いを深めた過程と学年ごとの計画を加えます。
出願の時期と、書き始める時期
出願の時期は大学で8月から翌年1月まで分かれます。慶應義塾大学のFIT入試は2026年8月3日〜9月3日、中央大学は9月1日〜9月7日、立教大学は9月1日〜9月10日です。学校推薦型選抜の上智大学は11月1日〜11月5日、一橋大学は2027年1月18日〜1月29日に出願します。方式ごとの細部は法学部の総合型選抜にまとめています。
親記事の志望理由書の書き方では、第1稿を出願の1か月以上前に書き上げておくと、書き直しの時間を取れるとしています。8月3日に出願が始まる慶應義塾大学のFIT入試なら、7月上旬までに第1稿を仕上げる計算です。
法学部で学ぶこと(法律学科・政治学科・国際関係法など)
志望理由書で「何を学びたいか」を書くには、法学部で学ぶ中身を知っておく必要があります。関西大学の法学部は、AO入試ガイドブックで、入学後は法学・政治学の幅広い科目を履修すると説明しています。その際、法律学では制度・判例・学説の、政治学では理論・現状分析の基礎を身につけます。学科の名前も大学で違います。
| 学科(大学の例) | 学ぶことの中心 | 志望理由書の問いの例 |
|---|---|---|
| 法律学科(慶應義塾大学・同志社大学・上智大学など) | 憲法・民法・刑法・行政法など、ルールの仕組みと判例・学説 | 契約や権利の争いを、法はどう調整するか |
| 政治学科(慶應義塾大学・同志社大学・学習院大学など) | 政治の理論、選挙や議会、地方自治、国際政治の現状分析 | 意見が分かれる問題を、どう決めれば正当か |
| 国際関係法学科(上智大学) | 国どうしの関係を扱う法と、国境を越える取引や人の移動のルール | 国境を越える問題を、どの国の責任で解決するか |
| 地球環境法学科(上智大学) | 環境問題への法的な対応 | 環境を守るルールを、どう実効的にするか |
| 国際公共政策学科(大阪大学) | 法・政治・経済を組み合わせた公共政策 | 国際的な課題に、政策でどう対応するか |
| 国際ビジネス法学科(立教大学) | 企業の国際的な取引を支える法 | 国をまたぐ取引の争いを、どう防ぐか |
将来の分野と法学部の学びをつなぐ
中央大学 法学部のチャレンジ入学試験は、将来活躍したい分野で3つの部門に分けて募集しています。
| 部門 | 要項に書かれた分野 |
|---|---|
| リーガル部門 | 法曹、企業法務、市民活動等の法的な分野 |
| パブリック部門 | 国、自治体、メディア、NPO等の公共的な分野 |
| グローバル部門 | 国際機関、国際的企業、NGO等のグローバルな分野 |
職業の名前だけでなく、その分野で解決したい問題まで書くことが、どの大学にも通じます。
大学が法学部の志望理由書で見ている点
大学が何を見ているかは、アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)と要項の評価の説明から読み取れます。関西大学の法学部のアドミッション・ポリシーは、求める人の一つとして、「広く社会の出来事に関心を持ち、法と政治を学ぶことで自らの考えを形づくり、さまざまな利益や価値を民主的に調整しながら問題解決に向けて行動しようとする意欲」を挙げています。
同じ大学のAO入試ガイドブックは、Ⅰ型の入学志望理由書の評価の観点を、2026年度の講評で示しています。個人的・主観的な感想や情緒的な散文・随筆ではなく、論理的かつ説得力のある議論を展開しているかです。誤字・脱字や「て・に・を・は」の用法も評価の対象です。
関西大学の法学部の要項は、他人の文章を書き写したり、代わりに書いてもらったりした書類を無効とすると明記しています。例文は構成をつかむために読み、文章は自分の言葉で書きます。
法曹志望なら、法曹のイメージまで書く
関西大学のAO入試Ⅲ型は、法曹(裁判官、検察官および弁護士)を志望する人を対象にした方式です。2026年度の入学志望理由書の課題は、「法曹を志望する理由について、あなたが抱いている法曹イメージをできれば具体的な体験を踏まえて描写しながら記入してください。」でした。弁護士を目指す場合も、どんな人のどんな問題に関わる法曹なのかを、体験と結びつけて書きます。
法学部の志望理由書の組み立て方(きっかけ→問い→学びたい分野→将来)
法学部の志望理由書は、次の4つの部分で組み立てると、設問が違っても筋が通ります。書き出しの型は志望理由書の書き出し、終わり方は志望理由書の締め方で詳しく説明しています。
特に大切なのは「問い」です。出来事を「困った」「許せない」で終えず、どの立場がぶつかっているのかを書くと、法律学・政治学で学ぶ理由になります。
法学部ならではのきっかけの見つけ方
きっかけは大きな経験でなくてかまいません。
| きっかけの種類 | 場面の例 | 問いへの言い直し | 近い分野 |
|---|---|---|---|
| 家族のこと | 祖父母の家の相続で、親族の話し合いが難航した | 家族の財産は、誰がどのように引き継ぐのが公平か | 民法(家族法) |
| ニュースの判決 | 報道で、判決への賛否が分かれていた | 裁判所は、対立する権利をどう比べて判断したのか | 憲法・民法・刑法 |
| アルバイトの契約 | 辞める時やシフトの変更でもめた | 働く人と雇う人の約束は、どこまで守られるべきか | 民法・労働法 |
| 地域の条例 | 路上喫煙を禁じる条例があっても、守られていなかった | 規制は、どこまでの重さなら許されるか | 行政法・地方自治 |
| 模擬裁判 | 授業で原告と被告の主張を準備した | 同じ事実から、なぜ異なる結論が導かれるのか | 民事法・刑事法 |
| 選挙・議会 | 住民説明会や議会を傍聴した | 意見が分かれる問題を、どう決めれば正当か | 政治学・地方自治 |
きっかけを選んだら、新聞や入門書で賛否の両方の立場を調べます。調べても分からなかった点が、大学で学びたいことになります。
「弁護士になりたい」だけでは弱い理由
よく見られるのが、「弁護士になりたい」「公務員になりたい」と職業名だけを書く形です。職業名だけでは、その職業を目指す誰にでも当てはまり、法学部で何を学ぶのかが見えません。慶應義塾大学のFIT入試の設問が問うのも、法律学・政治学が自分の将来にどのような意味をもち得るのかです。
「市民の安全を守る警察官」ではなく「高齢者を狙う詐欺の被害を防ぐ仕組みに関わる警察官」のように、関わりたい問題を添えます。将来の夢が決まっていない場合も、関わりたい問題を書けば、学ぶ理由は伝わります。
法学部の志望理由書の例文(400字・800字・1,200字)
労働法、政治学、国際取引、行政法(公務員志望)と、分野を変えた例文を4本載せます。いずれも説明のための創作です。経験は自分のものに、「〇〇教授」などの伏せ字は正式な名称に置き換えます。例文にある科目と年次も、大学の公式サイトで確かめてください。ほかの学部の例文は志望理由書の例文にまとめています。
400字の例文(法律学科・アルバイトの契約から労働法へ)
きっかけの段落は3文にとどめ、最後の1文を問いにします。
例文|法律学科・400字以内の指定(389字)
私は、働く人と雇う人の約束がどこまで守られるべきかを、契約と労働のルールから学びたいと考え、貴学法学部法律学科を志望します。
高校2年の冬、塾で採点のアルバイトをしていた友人が、辞めたいと伝えると「代わりを見つけるまでは辞められない」と言われました。友人は雇われた時に書面を受け取っておらず、何が約束かも分かりませんでした。辞める自由と雇う側の事情は、どう調整されるのかという問いを持ちました。
貴学科では、1年次から民法の契約の考え方を学び、3年次には労働法の演習で、働く場の争いを判例から考えられます。私は契約の基本を身につけたうえで、学生が働く時の約束がどう扱われてきたかを、判例を読み比べて調べたいと考えています。働く側だけでなく、雇う側の事情も踏まえて考えます。
卒業後は、労働の相談を受ける行政の仕事に就き、若い人が働く前に約束を確かめられる仕組みをつくることが目標です。
| 段落 | 部分 | 字数 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 第1段落 | 結論 | 62字 | 学びたい分野と学科を1文で示す |
| 第2段落 | きっかけと問い | 134字 | 身近な出来事を、法の問いに言い直す |
| 第3段落 | この大学・学部で学びたいこと | 138字 | 科目の名前と、自分の問いを結ぶ。最も長い段落 |
| 第4段落 | 将来の目標 | 55字 | 職業名に、関わりたい問題を添える |
友人の出来事を、辞める自由と雇う側の事情という二つの立場の調整として言い直し、民法と労働法の学びにつなげています。
800字の例文(政治学科・住民説明会から合意形成へ)
800字前後では、きっかけの段落に、自分で調べた資料を加えられます。
例文|政治学科・800字以内の指定(739字)
私は、住民の意見が分かれる施設の建設を、どのような手続きで決めれば納得が得られるのかを学びたいと考え、貴学法学部政治学科を志望します。
高校2年の秋、私の住む市で、ごみ処理施設を建て替える場所をめぐる住民説明会があり、父と参加しました。候補地の近くに住む人は、ごみを運ぶ車が増えることへの不安を訴えました。一方で、市のほかの地区の住民からは、早く決めてほしいという声が出ました。市の担当者は、計画に沿って手続きを進めていると説明しましたが、会場の不満は収まりませんでした。帰宅後、新聞の地域面の記事と市議会の会議録を読み比べると、候補地は説明会の前に、ほぼ決まっていたことが分かりました。手続きが正しくても、住民が納得できない決め方があるのではないか。これが私の問いです。
貴学科では、政治学の理論と地方自治を基礎から学び、2年次からは少人数の演習で、政策が決まる過程を資料から分析できます。〇〇教授のゼミでは、住民参加の仕組みや、意見が対立する政策の合意形成が研究されています。私はまず政治理論の授業で、民主的な決定とは何かを学び、多数決だけでは決めにくい問題があることを、理論の言葉で説明できるようになりたいと考えています。そのうえでゼミでは、いくつかの自治体の施設の建設の事例を比べます。住民の意見を聞く時期や方法の違いが、決定への納得にどう影響したかを調べます。反対した住民と、早い決定を望んだ住民の両方の立場から資料を読むことを、在学中の課題にします。
卒業後は、地域の報道機関の記者として、自治体の決定がどのような過程で行われたのかを、住民に分かりやすく伝えたいと考えています。決まった結果だけでなく決め方を伝え、住民が早い段階から意見を出せる地域をつくることが目標です。
| 段落 | 部分 | 字数 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 第1段落 | 結論 | 67字 | 政治学で考えたい問いを1文に入れる |
| 第2段落 | きっかけと問い | 268字 | 参加した場面、自分で調べた資料、問いの順に書く |
| 第3段落 | この大学・学部で学びたいこと | 294字 | 学ぶ理論、学べる場、在学中に確かめることの順に書く |
| 第4段落 | 将来の目標 | 110字 | 最初の問い(決め方)と同じ言葉で結ぶ |
資料を読み比べた過程を足したため、きっかけと問いが3割を超えています。将来の目標でも、最初の問いの「決め方」という言葉を繰り返しています。
800字の例文(国際取引・理由と将来の2つを問う様式)
慶應義塾大学のFIT入試のように、学ぼうと考えた理由と、将来における意味を問う設問を想定した例です。慶應義塾大学の様式は1つの設問なので、見出しは付けず、前半と後半の段落で分けます。
例文|理由と将来の2つを問う様式を想定した創作・800字以内(715字)
前半(学ぼうと考えた理由)
私が法学部で法律学を学ぼうと考えたのは、国をまたぐ買い物で約束が守られなかった時に、どの国のルールで解決するのかを学びたいからです。高校2年の春、海外の通販サイトで買った靴が届くと、注文とは違うサイズでした。英語で返品を求めるメールを送りましたが、返ってきたのは、返品の送料は購入者が負担するという一文だけでした。送料は靴の代金の半分近くになり、私は返品をあきらめました。国内の店で買っていれば、同じ結果になったのでしょうか。調べてみると、売る側と買う側が別の国にいる取引では、どの国の法律で判断するのかがまず問題になると分かりました。買う人を守るルールが国ごとに違うなら、国境を越えた取引の約束は、どのように守られるのか。入門書を読んでも、その仕組みは十分に理解できませんでした。この点を確かめるには、法律学を基礎から体系的に学ぶ必要があると考えました。
後半(将来における意味)
法学部で学ぶ法律学は、国をまたぐ取引で、売る人と買う人の双方が安心できる約束をつくるための土台になると考えています。入学後は、まず民法で契約の基本を学び、そのうえで国際取引に関わる法の授業で、どの国の法律を当てはめるかを決める考え方を学びます。ゼミでは、返品や返金について、いくつかの国の消費者を守るルールを英語の資料で読み比べ、違いがどこから生まれるのかを調べたいと考えています。比べる国は、通販でよく利用される国から選び、英語の資料を原文で読む力も在学中に身につけます。卒業後は、海外と取引する企業の法務部門で、国をまたぐ契約のトラブルを防ぐ仕事に就くことが目標です。返品をあきらめた経験を、同じ思いをする人を減らす契約の工夫に変えることに、法学部での学びを生かします。
| 部分 | 字数 | ポイント |
|---|---|---|
| 前半(学ぼうと考えた理由) | 378字 | 1文目で設問の言葉を使って答え、調べても分からなかった点で終える |
| 後半(将来における意味) | 337字 | 学ぶ順番と、将来の仕事にとっての意味の両方に答える |
前半は調べても分からなかった点で終え、後半は学ぶ順番と、将来の仕事にとっての意味の両方に答えています。
1,200字の例文(法律学科・公務員志望)
1,200字前後では、一つの経験から問いを深めた過程と、入学後の学び方を順に書きます。
例文|法律学科(公務員志望)・1,200字以内の指定(1,040字)
私は、地域の迷惑を防ぐための規制が、どこまでの重さなら許されるのかを、行政法の視点から学びたいと考え、貴学法学部法律学科を志望します。
私が通学に使う駅の前は、市の条例で路上喫煙が禁止されている区域です。違反すると過料を科すと書かれた看板もあります。それでも朝の駅前では、たばこを吸う人を毎日のように見かけました。高校2年の夏、区域の境目を歩いて確かめると、区域のすぐ外の通りに吸い殻が集まっていました。禁止する場所を広げても、人が別の場所に移るだけではないか。逆に、過料を重くすれば守られるのか。市のウェブサイトで条例を読むと、禁止区域の決め方と過料の額が定められていました。入門書で調べると、条例は法律の範囲内で定めるものであり、規制は目的に見合った重さでなければならないという考え方があると知りました。迷惑を防ぐという目的のために、人の行動をどこまで、どのような手段で制限してよいのか。これが私の問いです。
貴学科では、1・2年次に憲法と行政法を学べます。憲法では人の自由がどのような場合に制限されるのかを、行政法では行政が規制を行う時の手続きと、規制の重さの考え方を学びたいと考えています。規制される人と、迷惑を受ける人の両方の利益をどう比べるのかを、法の言葉で説明できるようになることが、最初の目標です。調べる方法としては、2年次の演習で、判例の読み方と、自治体の条例や、条例ができるまでの議論の記録の読み方を身につけます。条例の文言だけでなく、どのような議論を経て規制の重さが決まったのかを、資料から確かめる力が必要だと考えています。3年次からは、〇〇教授のゼミで、自治体の規制の手法を研究したいと考えています。路上喫煙の規制では、注意や指導にとどめる自治体もあれば、過料を科す自治体もあります。ゼミでは、規制の手段の違いが守られ方にどう表れているのかを、公表されている資料をもとに調べます。区域の境目の通りの様子も、自分で歩いて確かめます。卒業論文では、重い規制を選ぶ前に試すべき手段があるのかを、行政法の考え方に沿って論じます。
卒業後は、市役所の職員として、地域のルールづくりに携わりたいと考えています。公務員として規制を作る時に、その重さが目的に見合っているかを、規制を守る側にも迷惑を受ける側にも説明できる職員になることが目標です。吸い殻が集まっていた境目の通りのように、規制の外に問題が移る場面も見落とさず、地域に合った手段を選べるようになりたいと考えています。
| 段落 | 部分 | 字数 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 第1段落 | 結論 | 67字 | 長い字数でも結論は1文に収める |
| 第2段落 | きっかけと問い | 338字 | 一つの出来事から、自分で確かめたこと、調べたこと、問いの順に深める |
| 第3段落 | この大学・学部で学びたいこと | 465字 | 最も多くの字数を使う。学ぶ科目、調べる方法、ゼミで確かめることの順に書く |
| 第4段落 | 将来の目標 | 170字 | 公務員として何をしたいかまで書く |
駅前の場面を歩いて確かめ、条例と入門書で調べて問いを深めています。公務員志望では、公務員になって何をしたいかまで書きます。
法学部の志望理由書のNG例と直し方
よくある3つの形を、直す前と直した後で並べます。いずれも説明のための創作です。
直す前の例|職業名だけを書いている(98字)
私は幼いころから弁護士に憧れてきました。ドラマで、困っている人のために法廷で闘う弁護士の姿を見て、自分もそうなりたいと思いました。貴学法学部で法律を学び、弁護士になる夢をかなえたいと考えています。
直した後の例(156字)
私は、高齢者が訪問販売で結んだ不利な契約から抜け出す方法を、消費者を守る法の仕組みから学びたいと考え、貴学法学部を志望します。近所に住む一人暮らしの方が、必要のない工事の契約を結び、解約の方法が分からずに困っていたことがきっかけです。将来は弁護士として、契約のトラブルに悩む高齢者の相談に応じたいと考えています。
直す前の例|正義感の主張だけで終わっている(94字)
あおり運転のような危険な行為は、決して許されるものではありません。被害者の気持ちを考えると、罰をもっと重くするべきだと強く思います。社会の悪をなくすために、法学部で学びたいと考えています。
直した後の例(145字)
危険な運転を防ぐには、罰を重くすることがどこまで有効なのかを、刑事法の視点から学びたいと考えています。報道で、罰を重くすべきだという意見と、罰だけでは防げないという意見の両方を読み、どちらにも根拠があると知りました。貴学部では刑法とともに犯罪を防ぐ政策を学び、二つの意見を比べて確かめます。
直す前の例|法学部で何を学ぶのかが見えない(114字)
法律の知識を身につけて、社会の役に立ちたいと考え、貴学法学部を志望します。法律は私たちの生活のあらゆる場面に関わっており、法律を知っていれば、多くの場面で困らずに済みます。貴学で幅広く法律を学び、将来に生かしたいと考えています。
直した後の例(129字)
貴学法学部を志望するのは、政治学と法律学の科目を組み合わせて履修でき、私の関心である選挙の制度を両方の面から学べるからです。オープンキャンパスの模擬授業で、投票の仕組みが変わると選ばれる人も変わるという話を聞き、制度の設計を学びたいと考えるようになりました。
| NGの形 | 伝わらない理由 | 直し方 |
|---|---|---|
| 職業名だけ | 誰にでも当てはまる | 関わりたい問題と学ぶ分野を書く |
| 正義感の主張だけ | 感想にとどまり、根拠のある議論でない | 対立する意見の両方を示し、問いにする |
| 何を学ぶのかが見えない | どの法学部にも、誰にでも当てはまる | 科目や履修の仕組みと、自分の問いを結ぶ |
面接・口頭試問で聞かれやすいこと
法学部の総合型選抜では、提出した志望理由書の内容を深く聞かれる前提で準備します。関西大学のAO入試Ⅰ型の要項は、面接(口頭試問を含む)に入学志望理由書に関する質問も含むと明記しています。慶應義塾大学のFIT入試は、A方式で口頭試問(約15分)、B方式で個人面接(約10分)を行います。
| 質問の例 | 準備すること |
|---|---|
| なぜ経済学部や社会学部ではなく、法学部なのですか | 自分の問いが、法律学・政治学でなければ深められない理由 |
| 志望理由書に書いた問題について、反対の意見にはどう答えますか | 反対の立場の根拠と、それでも自分がそう考える理由 |
| 関心のあるニュースを、法や政治の問題としてどう見ますか | 事実と自分の意見を分けて説明すること |
| 入学後、どの科目やゼミで何を学びたいですか | 志望理由書の計画と同じ言葉で答えること |
| 法学部での学びを、将来の仕事にどう生かしますか | 職業名だけでなく、関わりたい問題 |
書いた問題について、反対の意見にどう答えるのかまで、声に出して説明できるようにしておきます。質問の型は面接対策、学問的な質問への備えは口頭試問の対策で説明しています。
よくある質問
- Q. 法学部の志望理由書には何を書けばいいですか?
- A. 法律学・政治学を学ぼうと考えた理由、入学後に学びたいこと、その学びが将来にもつ意味の3つが柱です。身近な出来事から生まれた問いを示し、その問いを法学部のどの分野で深めたいか、将来どんな問題に関わりたいかを、一本の筋で書きます。
- Q. 法学部の志望理由書のきっかけが思いつきません。
- A. 大きな経験は要りません。アルバイトの契約、家族の相続、地域の条例、ニュースの判決、授業の模擬裁判など、身近な場面で「どちらの言い分にも理由がある」と感じたことがきっかけになります。その場面を、誰の権利や利益をどう調整するかという問いに言い直してみてください。
- Q. 将来の夢が決まっていなくても、法学部の志望理由書は書けますか?
- A. 書けます。職業を一つに決めなくても、どんな問題に関わりたいかを書けば、学ぶ理由は伝わります。たとえば「働く人の約束が守られる社会にしたい」のように、問題を軸に書きます。
- Q. 公務員や警察官を目指す場合、法学部の志望理由書はどう書けばいいですか?
- A. 公務員や警察官になって、どの問題に取り組みたいかまで書きます。たとえば市役所なら条例づくり、警察官なら詐欺の被害を防ぐ仕組みなど、関わりたい問題を示し、そのために行政法や刑事法などで何を学ぶかをつなげます。
- Q. 法学部の志望理由書に、法律の条文や判例を書いたほうがいいですか?
- A. 無理に書く必要はありません。大学が見ているのは、法律の知識の量より、社会の問題を法や政治の問題として捉え、根拠をもって考えているかです。資料を書く場合は、面接で説明できる範囲にします。
- Q. 法学部の志望理由書は、法律学科と政治学科で書き方が変わりますか?
- A. 組み立ては同じですが、問いの向きが変わります。法律学科は、ルールの中身や争いの解決に関する問い、政治学科は、物事の決め方や権力の働きに関する問いが中心になります。慶應義塾大学のFIT入試のように、法律学科と政治学科の併願ができない方式もあるので、どちらの問いに近いかを考えて学科を選びます。
まとめ
法学部の志望理由書では、法律学・政治学を学ぼうとする理由、入学後に学びたいこと、学びが将来にもつ意味が問われます。身近な出来事を「誰の権利や利益をどう調整するか」という問いに言い直し、学びたい分野と、関わりたい問題につなげて書きます。例文は構成と分量をつかむために使い、文章は自分の言葉で書いてください。
東京修学館では、志望理由書の材料の整理から構成づくり、面接の練習までのご相談を、無料相談でお受けしています。法学部の入試の方式は法学部の総合型選抜、志望理由書全体の書き方は志望理由書の書き方もあわせてご覧ください。
学長への無料相談はこちら
慶應義塾大学博士・敬愛大学特任名誉教授の家近亮子学長が、あなたの志望校選びと総合型選抜対策を直接アドバイスします。



